このごろ - 32
こんばんは。原百々子です。
昨晩、カーテンに明るい光が透けていました。はて、あんなところに街灯があっただろうか。カーテンを開けて覗きこむ。月でした。越してきてちょうど一年。まだ知らない景色がありました。
幻のにおい
本物のにおいは全くわからないのですが、このごろ、脳の誤作動でにおいが作りだされています。いわゆる「幻臭」と呼ばれるもので、わたしはファンシーに「幻のにおい」と呼んでいます。かなり不快ですけどね。いまのところ、幻のにおいは四種類あります。
タイプ①
複数の食べもののにおいが混じっている感じ。嗅覚脱失の自覚がないころのにおいです。もう現れなくなりましたね。
タイプ②
糊のようなベタっとしたにおいです。退院後、除毛クリームを使いました。はじめて使ったのでにおいを知りません。糊というか、ボンドのような質感だなあと思ってしまったがために、そういうにおいを作りだしているのでしょうか。頻度がいちばん高く、不快感も低めです。
タイプ③
化学的なにおいです。雨の日によく現れます。雨のにおいではないです。くさいというより強いため、やる気が削がれていきます。
タイプ④
漬物が腐ったにおいでしょうか。腐った漬物のにおいを嗅いだことはありませんが……。このにおいは一日だけ現れました。夢のなかでおにぎりを腐らせてしまって。そのときのにおいが目覚めたあとも持続している。気が狂いそうでした。
そもそも嗅覚は機能していないので、別のにおいで上書きができません。音楽や食事で気をそらすことで対処しています。このごろ、温かいものもよく飲んでいます。美味しい飲みものがあれば、ぜひ教えてください!
そう。夢のなかにはにおいがあるんですよ。これも幻のにおいの一つ。
夢のなかではごま油のにおいがわかったんです!嗅覚が機能していたころは、夢のなかのにおいなんて気にしたことがなかった。においのある世界に未練たらたらなんですよ。毎朝、柔軟剤とコーヒー豆に鼻を近づけてしまうくらいには……。においがわからなくなってもこれだけ仔細に書けるのは、五感のなかで一番鋭くて、頼りにしていたのが嗅覚だったから。二十三年分のストックのおかげです。
まだ眠るのが怖くて仕方がないけれど、夢のなかのにおいをたのしみに目を瞑りましょう。
原稿が終わらない
文学フリマ京都10(1月18日・みやこめっせ)に出店します。入稿したらまた改めてお知らせします。
ZINEでもメルマガでも、できるだけ事故について触れずに書こうと思いつつも、やっぱり難しいんですよね。事故を経験していないわたしには戻れない。でも、同じ条件下で書けることなんてないよなあと思いました。事故が人生のできごととして大きすぎるだけで、わたしはいまのわたしとして書くほかないんですよね。
このごろのおすすめ
原稿をサボって映画やドラマを観ていました。
きみの瞳が問いかけている
吉高由里子さん演じる明香里は、交通事故で視力を失っています。あるシーン(序盤)で、明香里が「ふだん何となく見ていたものは、記憶に残っていない」というようなことを言います。わたしは深く頷きました。
作中に金木犀が出てきます。最後に嗅いだ金木犀のことをちゃんと覚えています。
この街ではじめての秋。至る所で金木犀の香りと出会っているのに、肝心の木が見つからない。金木犀スポットを見つけられぬまま秋が終わるかも、なんて思っていたときに見つけました。事故の数日前のことです。来年はすぐにやって来られるように、と写真で記録していました。このおかげで、来年の秋は目で楽しむことができます。よかった。
人間標本
全五話。一話観てしまったら止まれません。諦めてください。
止まれない理由が「語り手が替わるから」なんですよね。以前友人に勧められて、同じく湊かなえさん原作の映画『母性』も観ました。こちらも語り手が替わるのがミソなんですよ。どちらも視点の切り替えの目的は違いますが、わたしは自分が知覚しているものを疑いたくなりました。一辺倒で物を見ていたり、他者の意図が酌めていなかったりしていることがあるし、自分のなかでも同じことが起きていて。一年前、二年前の日記を読むと、もうわたしにはない視点が見つかります。だから、自分を引っ込めるのではなく、もっと話してみよう(書いてみよう)と思いました。
これまでに二人、湊かなえさんの作品がすきなひとと出会いました。「『Nのために』が好みではなくて」と話したら、「『Nのために』で止まるな」と二人ともから言われたので、まずは『人間標本』から読んでみようと思います。
まだ入稿できていないし、突然休職になったから仕事納めもしていないし。まだ何も締めくくれません(笑)入稿したら、実家の近くの交通神社にお礼参りに行きます。先月、助けていただいたので。
本年もありがとうございました。よいお年をお迎えください。今週も、そして来年もともにがんばりましょう!
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